中秋の名月  

 
この書は、趙さんの奥さんが書かれ

 
   2004年9月22日。北京の打ち上げ会。

  20日、21日は夫々自由行動にした。中国人の殆どは、早朝天壇公園を見た後、バスで八達嶺の万里の長城に行ったようだ。

Kさん、Tさん、は天安門広場の国旗掲揚を見学。そのあと、歴史博物館をじっくり見学する。

Fさんは、以前留学生でFさんとHさんの中国語教師だった友人を訪ねる。

 

私は、1992年、1993年、1994年とここで暮らして、そのとき出来た旧友を訪ねる。

1992年、定年後始めて中国望郷の旅をしたとき、最初に行ったのが、天壇東路にある中国棋院だった。

無謀にも私は、囲碁留学を申し出た。当時副院長だった王汝南さんと、通訳の王誼さんが、日本から来たドンキホーテ爺さんを、丁重に応対してくれた。しかし私の申し出はきっぱりと断られた。

王汝南先生曰く「貴方の中国語は上達するかもしれませんが、碁は無理です」

私は、今でもこの言葉を恨んでいる。私の碁の上達が止まったのは、この言葉の故だと。

私の名誉の為に言うなら、その後羅建文七段の三子の試験碁に合格し、中国棋院から五段の免状を貰った。

1993年、1994年の二回、合計九ヶ月北京語言学院に短期留学して中国語を勉強した。新制中学を卒業してすぐ就職した私にとって、ここは唯一の母校だ。

まず中国棋院を尋ねる。

丁度日本から藤沢秀行名誉棋聖が来て、公開研修会を開いていた。その席の後ろにそっと座る。王汝南先生が目ざとく見つけて、日本語で「凄い!」と握手を求めてくれたのは嬉しかった。今回の自転車旅行の件は予め連絡している。しかし顔を見るまでは信用していなかったようだ。打ち上げ会の場所と日程が具体的に決まったので、ご案内したら、「必ず行きます」と快諾して下さった。先生は昨日は広州、今日は日本からの客人の接待、テレビの囲碁解説等々、分刻みで忙しい人だ。

 

その後、北京北西の郊外にある北京語言学院へ行く。風はかなりきつい向かい風。

1992年は3号環状線が工事中だった。1993年、1994年は4号環状線が工事中だった。いまは5号環状線が出来ている。

地下鉄も、二号環状線の周辺と、林檎園までの直線だけだったが、今は東の郊外まで地下鉄の環状線が出来ている。

当時の老師李郁章さんは、定年で学校のアパートに住んでいる。私が知る限りでもこのアパートは三軒目。訪ねる度に立派になっている。100平米はたっぷりある。南向きのテラスが3。サンルーム、寝室2、10畳ほどの広い居間、書斎、キッチン。勿論衛生設備も完備している。

北京語言学院は外国人留学生が多いから、中国の大学でも一番金回りのいい学校である。

 

中国は急速な改革開放の中で、極端な貧乏と発展が並存している。今回は、その両極端を見た。

 

打ち上げ会の席は、「桂公府」が用意された。

 北京東城区芳嘉園胡同11号。狭い路地裏を入るので、どんな所かと思うが、北京の中心にこんな閑静な所がと驚く高級レストランである。

 清の西太后が、紫禁城に入る前ここで暮らしたことがあるそうだ。代表的な四合院。建坪だけで3000平米はゆったりある。総面積は10000平米を越えるだろう。

 料理は恐らく最高のものと思うが、私はこの方面の知識に乏しい。

 参考までお値段だが、四テーブル(40人分)飲み物込みで4000元だった。

 先に述べた、中国棋院のお二方の先生、李老師ご家族、やはり以前北京語言学院の先生で、今は北京大学の教授をしている孫先生ご夫妻、今も語言学院の先生をしている賀先生、囲碁友達の石暁明君、福田先生の元日本語の先生でもある北京の友人お二人、Tさんの友人でわざわざ長春から見えた呉さん、日本から三宅さん、瀋陽から宮さん、他にマスコミ関係の人達と賑やかな宴席になった。

 Kさんが下手な(失礼)手品をご披露。

 我等が四大美女

  楊貴妃 劉さん

  西施  奚さん

  王昭君 周さん

  貂蝉   張さん

 も大活躍。最後は全員で「さくら」の合唱でしめた。

 活躍した私達の自転車は、お世話になった北京放送局に寄付する。

 

 23日朝全員無事で、瀋陽駅に到着。これで私達の目的は完全に達成した。

 28日は中秋節。TさんとFさんは残念ながら既に帰国していないが、今回の中国人隊員全員それに趙さんの奥さんも加えて、団欒の宴を開いてくれた。

 今日は私も、Kさんも背広にネクタイ。勿論髭も剃ってばしっと決めている。

 皆さんも制服を脱ぎ、王隊長なんかどこの社長さんかと見間違えるほど決めている。

 こうして中秋節に一つのテーブルの囲めるのは、それこそ深い縁である。

 「日中友好」の旗印の下、どれほどの成果があったかは分らない。しかし少なくとも私達13人はしっかりと手を結んだ。

 

 中秋の名月に見守られてこの友好が、永久に続くことを心から願う。